シンプル粕汁で風邪予防

冬真っ盛り。空気が乾燥する今の時期は、風邪やインフルエンザが猛威を振るいます。私はこの季節、温かい汁物を食卓に欠かさないのですが、喉を潤し、体を温める汁物は、毎年かなり風邪予防に効果を発揮している実感があります。

先日仕事で大阪に行った際に、明治時代から営業している、以前から気になっていたある有名な食堂でごはんを食べました。かやくごはんと焼き魚と粕汁を注文したのですが、この粕汁の具が、潔いほど少なくてシンプル。でもおだしがとびきりおいしくて、目から鱗が落ちる思いでした。

スープや汁物というと、今はそれさえ食べれば栄養がとれる具だくさんのものが主流で、私自身もこのところ、家で作る汁物はいつも具材をたっぷり入れていました。でもこの粕汁に出会って、いつも具だくさんにすることにこだわる必要はないかも、と感じました。和のスープに限っては、おいしいだしを効かせたベース、つまり汁をたっぷり味わうタイプをもっと楽しんでもいいのではと思ったのです。

たとえば、濃いめにとったかつおだし(多めのかつお節を使って長めに煮出してOK)に大根と油揚げを入れ、酒粕をたっぷり溶いて、薄口しょうゆで味をつけたシンプル粕汁はいかがでしょう。

濃度があってアミノ酸がたっぷり含まれたひと椀は、心も体も温めてくれる冬の極上スープ。だしに昆布を加えれば味わい深さが増しますし、具材ににんじんやこんにゃくを加えればさらに本格的に。具材は1、2種の野菜だけでも手軽でおいしいです。いつものお味噌汁に酒粕を溶き入れるだけでも、体の温まり方がだいぶ違います。

冬場は具だくさんの汁物に加え、あえて具を少なめにしたシンプルな汁物、濃いめのだしに酒粕や味噌を溶くだけの気軽に作れる汁物をレパートリーに加えて、両方を使い分けると楽しいのでは。栄養たっぷりの温かいスープを毎日の定番メニューにすれば、ひき始めの風邪もどこかに飛んで行き、これからの寒い数ヶ月をきっと元気に乗り切れるはずです。

祖母のおせち料理

みなさんのご家庭では、お正月に何を召し上がりますか?

この時期いろいろ話題になるおせち料理ですが、「自宅で作る」「購入する」という選択肢で語るものではなく、大事なのは今も昔も、新年を迎えるにあたって普段とは少し違う料理を用意し、家族や親しい間柄の人たちと食卓を囲んで食べるということなのかな、と私は思っています。

そんな考えは、私の祖母のおせちにさかのぼります。私の実家は代々、神戸出身なのですが、あるときふと、お正月料理にも地方ならではのオリジナリティがあるのではと思い、親世代に尋ねてみたことがありました。両親は戦争の只中に育った世代で、子どもの頃に家族でおせち料理を囲んだ記憶はないとのこと。ではその上の世代、祖父母の時代はどうだったのかというと、父より年上の伯母が当時のことを覚えていて、祖母の料理のことをいろいろ教えてくれました。

祖母の用意するお正月のお重の中には、もちろん黒豆や数の子、ごまめなど定番の品々もありましたが、メインのごちそうとしていつもたっぷり入っていたのが、ハムやソーセージだったのだそうです。時は大正時代の終わり頃。味噌問屋の長女に生まれ、会社員の祖父に嫁いだ祖母は、雑誌『主婦之友』の料理ページを見ながら、子どもたちに手作りのカスタードクリームを使ったおやつを作ってくれるようなお母さんだったそうです。当時から神戸にはパン屋さんやデリカテッセンなど、ヨーロッパから入ってきた新しいお店がたくさん軒を連ねており、若い主婦であった祖母は、そんなハイカラな神戸の街を歩いて、ごひいきのハム屋さんを見つけたのかもしれません。デリカテッセンのショーケースの中で、キラキラ輝いているおいしそうなハムやソーセージ。そんなお気に入りのごちそう料理を、家族とお正月に囲むおせち料理のとっておきのメインに据えた、祖母の思いが伝わってきました。

その影響か、私も家族と囲むおせちには、肉料理をたっぷり入れます。ミートローフや鶏ひき肉を使った松風焼きなど、冷めてもおいしい肉料理は、我が家のお正月に欠かせません。そしてもちろん、ハムやソーセージも。年始に家族や大切な人と囲む食卓には、みんなが大好きな、ちょっと贅沢なおいしいものを、こだわらずに選べばいいのではないでしょうか。そんなことを思わせる、懐かしい祖母の思い出です。

毎日のごはん作りも家事もフルマラソン

先日『子どもはレシピ10個で育つ。』のエピソードをご紹介しましたが、
この本のやや長めのまえがきに
「毎日のごはん作りも家事もフルマラソンだから。」と書きました。
少し、その箇所を引用しますね。

「そんなに頑張らなくていいよ」と言ってくれる人たちもいますが、
正直なところ、頑張らないと家事も育児も回らないですよね。
大切なのは「頑張る」とか「頑張らない」ではなくて、
「少し頑張る日」や「ちょっとだけ力を抜く日」を作ったり、
家族や便利な道具に甘えたりして
自分で自分をコントロールしながら、走り続ける持久力。
そう、毎日のごはん作りも家事もフルマラソンだから。

 

考えてみれば、現代を生きる女性の
 特に30〜50代はフルマラソンみたいなものかもしれません。
仕事も忙しく、家庭も家事もある。
よい母であり女性でありたいと願って、走り続けて、
疲れてしまう人がとても多いと聞きます。
でも時には速度をゆるめて、
立ち止まって考える時間はあってもいいのです。
いつもいつも頑張らなくていい。 
急がなくていいから、時々力を抜いてもいいから、
考えながらゆっくり行こう。
とにかく棄権はしないで続けていこう。
やめないこと、止まらないことが成果につながるのですから。
いつか必ず、走ってきてよかったと思える日が来ますよ。

そんなこともお伝えしたくての追伸でした。

サンセールワインの魅力

今年最後の1ヶ月が始まりました。年末に向けて何かと気ぜわしいですが、仲間や家族と集まる機会も多く、楽しい季節ですね。今回はホームパーティのテーブルにぜひ選んでいただきたい、私の大好きなフランス・ロワール地方のサンセールワインのことをお話ししたいと思います。

ワインを勉強し始めた頃から、おいしいなと思っていたサンセールワイン。フランスワインの世界は奥深く、パワフルなボルドーや王道のブルゴーニュ、個性的な南仏など、さまざまなワインがあるけれど、いつも私の隣に置いておきたいのはロワールワインかな、と思うのです。

知人がロワール地方に移住したことをきっかけに、ここ8年ほど、足繁く現地を訪れるようになりました。目的は、現地のワインと和食のマリアージュを広めること。ワイン生産者を含む現地の方々に、私の作った日本食を食べてもらう交流会を毎年のように行っています。多彩で繊細な、ロワールを代表するサンセールワインは、和食との相性がとてもよいことを日本人にもフランス人にももっと知ってほしい。現地の人々は毎回、自分たちが飲んでいるワインが日本食に合うことに驚き、そして喜んでくださいます。今、食の世界では空前の日本食ブームで、天ぷらやすき焼きだけではない、日本人が普段食べている料理を、多くの人が注目しているそうです。

フランスで最も長い川、ロワール川の流域で作られるロワールワイン。ぶどう品種が多く、白、ロゼ、赤のほか、スパークリングも甘口ワインも揃っています。その中央部で生産されているのがサンセールワインで、使用されるぶどう品種はソーヴィニヨンブランとピノノワール。白ワインが有名ですが、おいしいロゼも赤もあります。北部の冷涼な地域で育つため、味わいは重たくなく軽やか。クラシックなフレンチにも合いますが、日本の普段の食事と合わせてみると、その相性の良さにきっと驚くはずですよ。

今や世界中のワインが手に入るようになりましたし、日本産のワインも本当においしくなってきました。チョイスの幅が広がりすぎて、何を選べばいいのかわからなくなったときは、昔から変わらず作られてきたフランスのおいしいワインに立ち返ってみるのもいいでしょう。この次、ワインを選ぶときには、ぜひロワール地方のサンセールワインも選択肢に入れてみてください。

読む料理本、『子どもはレシピ10個で育つ。』エピソード

今回は、10月末に発売された著書『子どもはレシピ10個で育つ。』についてお伝えしたいと思います。

自身の持ち込み企画ででき上がる本が多い中、この本は20代後半の若い女性編集者からのお声掛けで実現した一冊。雑誌の料理企画で知り合った彼女がふと言ったのです。仕事は楽しく充実している。でもこの先結婚して、子どもを持ったらどうなるだろう。若い彼女たち世代が目標としたい、少し年上の女性たちが、幸せそうではあるけれど、少なからずどこか大変そうに見える事実。子育てと日々のごはん作りは両立できるのだろうか。ごはんを作って食べるって楽しいことのはずなのに、なぜみんな苦しそうなのか。

そんな疑問や悩みをすくい上げながら、未来の子育て世代である編集者と、子育て真っ最中のライターさん、そして子育てがほぼ終わった私が、膝付き合わせ考えて、考えて。渦中の人たちが直面する問題と、その解決方法で構成されています。前半は「おかずの品数は多い方がラク」「もうみじん切りはやめよう」「つくりおき 家族にとっては残りもの」など、凝り固まった頭ををほぐす考え方のご提案。後半では、漬け込まない唐揚げ(実は究極の時短料理です)や、ひだを寄せずたたむだけで作れる餃子など、食べ飽きない定番のレシピ10個をご紹介。覚えて応用すれば、20にも30にも広がります。子育てしながらの料理ってラクではないけど、考え方次第で目の前は明るくなる。日々続ければ、必ず笑える日が来ます。

写真のない、シンプルな表紙の「読む料理本」。まえがきとあとがきもとても長いのですが、心からの思いが詰まっています。ぜひお手にとって読んでいただけるとうれしいです。製作に力と知恵を注いでくれた、若い同志たちに感謝します。

『並べて 包んで 焼くだけ レシピ』制作エピソード

11月のスタート。過ごしやすい秋晴れの日がうれしい今日この頃です。今回は、10月19日に発売された『並べて 包んで 焼くだけ レシピ』についてご紹介します。

今の時代、お料理のレシピはネット検索すれば出てきますし、レシピサイトもたくさんあります。それはそれでいいのですが、たとえば、お料理の本を手に入れないと楽しめないことってあるでしょうか? それを考え抜いて、ひとつの答えを見つけた編集者の方から、内容の制作を依頼され、でき上がったのがこの一冊です。

今回ご紹介する「パピヨット」(紙包み焼き)は、フランスなどヨーロッパでポピュラーな調理法。日本にもアルミホイルに包んで魚などを焼く「ホイル焼き」がありますね。今はそれほど人気がありませんが、実はこれってかなり賢い方法です。オーブンペーパーを使うパピヨットも同じで、素材を紙で包んで焼くだけで、旨みが凝縮されたおいしい料理に仕上がってくれます。大切なのは組み合わせと分量なので、そこはきっちりと考え、わかりやすいように写真もすべて実寸大で掲載しています。読者の皆さんは実際にこの本の上にオーブンペーパーを広げて、その上に書いてある通りの素材と調味料をのせるだけ。しっかり包んでオーブンで焼いて、お皿に盛り付ければ完成! まったく同じものが作れます。レシピ欄には「オーブン」「210℃」「10分」などの表記があり、これが作り方のすべてです。


肉も魚も野菜もおいしく調理できるパピヨット。たとえば鶏もも肉ならオレンジはちみつ風味、チーズタッカルビ、タンドリーチキンと豊富なメニューを揃え、エスニック麺とデザートも1品ずつ紹介しています。簡単で手間なし、必ず失敗なく作れて、こんなにラクで楽しい料理はありません。料理なんてしたことがないという方々にも、また子どもたちにも遊び感覚で作ってもらえるし、若い世代や忙しい人の味方にもなります。どんな人にも作れて、紙包みを開ければごちそう! そんな一冊をお届けすることができて、とてもうれしい秋になりました。

暮しの手帖別冊『これで よゆうの晩ごはん』の「よゆう」とは?

今回は、今月5日に発売された『これで よゆうの晩ごはん』をご紹介します。

タイトルにもある「よゆう」とは? 軸になっているのは、晩ごはんづくりの際に時間的にも気分的にも「よゆう」を持てるいくつかのルールです。たとえば、主菜は一から作るのではなく、手順を 朝、下ごしらえする→おいておく→少し手を加える と分解して取りかかりやすくすること。おいておくことでさらにおいしくなる主菜であること。準備の合間に作れる簡単な副菜があること。そして、できるだけ削ぎ落としたシンプルな作業にすることなどです。

それらのルールのもと、5人の料理研究家がそれぞれ工夫を凝らして、無理なくおいしく作れる晩ごはんメニューを組み立てました。先生が1人ではなく、5人いるのがこの本の面白さで、素材そのものの味を引き出す人、だしを上手に活かす人、香辛料を上手に使う人など、5人5様の暮らしの中から出てきたアイディアが見られるのがとても楽しいと思います。

昨年秋の『暮しの手帖』で同じテーマが特集され、レシピとアイディアを提供しましたが、発売後大きな反響があったと聞き、晩ごはんのメニューに悩む人は考えている以上に多いのだということがよくわかりました。手間ひまかけたレシピで、丁寧に作った料理がおいしいのは当然ですが、ちょっと忙しくてそこまでできない日もある。そんな日を乗り越える知恵も人生には必要。夢を売ることと同時に、目の前の問題を解決してくれる料理書も望まれていることを改めて強く感じます。

『フランス人がこよなく愛する3種の粉もの。』の楽しみ方

動向が心配された台風が過ぎ、暑いほどの晴天となった10月のスタートです。今年は夏から厳しい天候が続き、疲れがたまっている方も多いのではないでしょうか。おいしいものを楽しく作って食べて栄養をつけ、元気に毎日を過ごしたいもの。これからが本番の食欲の秋、味覚の秋を楽しんでいきましょう。

今回は、先月初めに発売になった今年4冊目の本『フランス人がこよなく愛する3種の粉もの。』の企画立案時のエピソードについて、少しだけお話ししたいと思います。
この本は、『フランス人は、3つの調理法で野菜を食べる。』『フランス人が好きな3種の軽い煮込み。』に続く、“フランス人の3つ” シリーズ第3弾。「粉もの」、つまり生地から作って焼き上げる料理という構想は決まっていたのですが、お菓子の本やキッシュの本などは、ほかにいくらでも出ています。そこに上田らしいひとひねりを加えるには?という課題についてしばらく考えていたとき、ふと思ったのです。「私は甘いもの好きというよりは、やはりお酒好きだ。それならば……」。
そこで、この本に収録されている「粉もの=キッシュ、タルト、ケークサレ」レシピにはすべて、相性ぴったりのワインやお酒を一緒にご紹介しました。スイーツレシピもあるのですが、たとえばベリーのタルトに黒こしょうをかけて赤ワインと合わせる、という、個人的におすすめしたい裏技(?)も書いてあります。お酒をこよなく愛する、私と似た人に向けた “裏メッセージ” もきっちり詰め込んだので、そんなところも合わせてお楽しみいただけたらうれしく思います。

明日10月2日には、久しぶりのNHK「あさイチ」の出演もあります。「みんな!ゴハンだよ」のコーナーで、鶏ささみのフリットをカリッとジューシーに仕上げるコツをご紹介します。お時間あれば、ぜひご覧くださいね。

9月の「いただきます」そして「ごちそうさま」

9月になりました。店先を彩る食材も秋色になり、新しい季節の訪れを感じますね。
味覚の秋の始まりを告げる食材のひとつがさんまですが、今年は3年ぶりの豊漁だそう。
今日は、定番の塩焼きをさらにおいしくするコツをご紹介します。

まず、さんまに多めの塩を振り、5〜10分ほどおいてから水洗いして、水気を拭きます。
みなさん、おそらくここでグリルなどに入れて焼くと思うのですが、両面焼きのグリルなどでさんまを焼くと、皮がはじけてしまったり、網に皮がくっついて破れてしまったりで、残念なことになった経験はありませんか?
グリルに入れる前に、皮の表面(両側)に薄くみりんを塗っておくと、なぜか皮が破れずきれいに焼けるのです。
みりんはごく薄く、指先につけてなでる程度で大丈夫。みりんには糖分が含まれているため、たくさん塗りすぎるとこげやすいので注意してください。
皮が破れずに焼けたさんまは、見た目が美しいだけでなく、脂が内部にとどまっていつも以上にふっくらジューシー。「みりんのひと塗り」ぜひお試しください!

塩焼きのほかには、梅干しと一緒に煮たものや、竜田揚げもおいしいですね。
ワインに合わせたいなら、焼いたものをほぐしてトマトの水煮と煮込めば濃厚なトマトソースに。おいしいパスタソースになります。
または、エリンギと一緒にパエリアに仕立てるのもおすすめです(さんまのパエリア)。
さんまは9月初めから11月までが旬で、これからどんどん脂がのってきます。
さんまがこんなにおいしく食べられる国は、世界じゅうで日本だけ。旬の今こそ、たっぷり楽しみましょう。