「スープ以上、煮込み未満」の一皿を

真冬になると、温かい汁物のお話をしたくなります。
汁物というと、小さく切った具材を汁で煮込む料理を想像しますね。豚汁や粕汁しかり、刻んだ野菜をコトコト煮込む「スープ・ペイザンヌ」しかり。たくさんの種類の食材をがんばって小さく切って作るのがスープ、とついつい思い込みがちですが、実はそうとも限りません。野菜の種類もぐっと少なめにして、たんぱく質の素材をひとつ入れれば、そのうまみで汁物は十分おいしくなります。

たとえば豚汁。普通は豚肉、ごぼう、大根、芋類、ねぎ、こんにゃくなどさまざまな素材を入れますが、肉以外に野菜2種類で作っても、シンプルでおいしい一皿になります。その際、具材を大きく切ることが、さみしくならないポイント。厚めの焼肉用の豚バラを炒めて、大きめの斜め切りのごぼうと、2、3cm長さのぶつ切りにしたねぎを加え、だし汁で煮て味噌を溶き入れれば、食べごたえのある豚汁に。

たとえばスープ・ペイザンヌ。玉ねぎ、セロリ、にんじん、じゃがいも、ベーコンなどを細かく切って作るのが定番ですが、大きめに切った鶏肉と玉ねぎ、じゃがいもだけで作っても、そのシンプルな滋味に驚くはずです。具材が大きいので煮る時間は少し長くなりますが、放っておけばいいだけなので、手間はかかりません。

フランス人は、具だくさんの汁物を食べるのがあまり得意ではないという話を聞いたことがあります。私たち日本人はスープや鍋物料理を楽しむとき、具材と汁を一緒に食べることに何の抵抗もありませんが、彼らは、具とスープのどちらからどう食べてよいのか迷ってしまうのだそう。フランス人はポトフやブイヤベースを食べるとき、一皿めでおいしいスープを楽しんでから、二皿めとして煮込んだ肉や魚、野菜を食べるのです。

単なる食習慣の違いですが、彼らの習慣を少しだけ取り入れて汁物を楽しむのもいいアイデアだな、と思いました。夕飯に大きな具入りのシンプルな汁物を、汁少なめに盛り付けてメインのおかずのように味わったあと、翌朝、ほとんど汁だけになったスープをパンと一緒に、あるいはごはんを入れておじやにして楽しむ。簡単で手間がかからないうえ、一度作って二度おいしい、いわば「スープ以上、煮込み未満」料理の二段活用。寒い日の朝ごはんにスープがあると、心身ともに温まって元気が出ます。

今月12日発売の『HERS』の料理特集ではちょうど、そういった少なめの具を大きく切って作るスープレシピをいろいろご紹介しています。よろしければご覧いただき、この冬ぜひ試してみてください。

「ごはん便」をきっかけに

早いもので年の瀬も近くなりました。年末年始に帰省される方も多いと思います。
今回は、高齢になった実家の親御さんの食事について考える機会になればと思い、先日発売された今年最後の新刊『父と母へのごはん便』(文化出版局)を作った経緯をご紹介します。

2年前の初夏に、『離れている家族に 冷凍お届けごはん』(講談社)という本を出しました。遠くに住む義母が急に入院することになり、すぐに行くことはできなくても義父のために何かできることはないかと考えた末、クール宅急便で送れる冷凍おかずを作ったのが発案のきっかけでした。この内容は親だけでなく、単身赴任のご主人や、家を出て暮らしている学生の子どものための食事としてもニーズがあったようで、12月現在で13刷と版をを重ねています。今回の企画はそれを一歩進めて「同居していない高齢となった親の食生活について、子ども側からできることを考えた一冊」として制作されました。

義父母の一件から、それまで元気だった親が急に倒れたり、入院したりというのは突然起こることなのだと実感。徐々に、ではないのです。たとえばどちらかが入院してしまったとして、残された一人が買い物に行けない事情があったり、気力や食欲が落ちたりすると、こちらが気づかないうちにきちんと食べることから遠ざかってしまっていることもあります。そんな事実をある日突然知ってショックを受ける前に、できることを考えておくのはとても大切だと思うのです。

この本は大きく5つのパートに分かれています。
1. おべんとうスタイルのごはん便:レンジでチンしてすぐに食べられる冷凍弁当。SOSにもすぐ対応できます。
2. ただ包むだけのクイックおかず:火を使わず、食材に調味料をからめてオーブンペーパーで包むだけ。驚くほど簡単で後片付けも楽!
3. 届くとうれしい、小さなごちそう:親世代にとってのごちそうといえば…の洋食や中華メニューを、食べきれる量に小分けして。
4. 親の「自炊力」を応援するアレンジ自在のおかず:ひと手間加えれば牛丼やチキンライスなど一品料理になる、手作りの「おかずの素」。
5. 「あと一品」をフォローする小さなおかず:もう一品欲しいときの、栄養価に優れた副菜いろいろ。

タイトルにもあるように、冷蔵も冷凍もできるのが今回ご紹介したレシピの特色です。自分で届けられる距離に住んでいる親なら、届けたらすぐ食べる分だけ冷蔵庫に入れ、残りは分けて冷凍するのもおすすめ。もちろん、自宅の冷蔵庫や冷凍庫に入れておいて、自分の食生活に役立てることもできます。

相手を思っていることが伝わる、「お元気ですか便」。お届けごはんを始めると、電話での会話内容が豊かになります。どうだった? おいしかった!という会話から、もっと甘めの味つけにしたら?とか、もっと小さく切るといいかもねとか、小さなコミュニケーションが増えていくのです。

離れて暮らす子どもとして、親にしてあげられる最善のことを詰め込んだ一冊。この年末年始、実家に帰ったときにちょっとこんな話をしてみて、時間があればぜひ一緒に、おかずをいくつか作ってみてはいかがでしょう。冷蔵庫に入れて帰ってきたら、すぐに電話やメールで感想が届くかもしれません。

今年も一年間おつきあいくださり、ありがとうございました。みなさま、どうぞ良い新年をお迎えください!

バター使いで秋冬らしい食卓を

秋が深まり、ようやく本格的に秋冬らしい料理が楽しめる今日この頃となりました。

野菜や果物、魚など旬の食材を使うことはもちろん、味つけを塩やポン酢などさっぱりしたものからしょうゆや味噌などのこっくりしたものに変える、薄切り肉からかたまり肉に変えるなどの工夫でも、食卓を秋冬モードに「衣替え」することができます。
それ以外に冬に向けて「衣替え」できる方法として、ちょっと見落としがちですがおすすめしたいのが、調理に使う油脂を変えること。同じ食材を調理するのでも、軽やかなオリーブオイルから、こくのあるバターに変えるだけでだいぶ味わいが違ってきます。シンプルな野菜のエチュベや、焼いたお肉でも、バターを使うだけで味にしっかりとした秋冬らしい厚みが出てくるのです。

肉や魚をバターで焼くなんてしつこくなるのでは? とお思いの方もいるかもしれませんが、あっさりした蛋白質の食材に合わせれば問題ありません。たとえば冬が旬の鱈は、バター焼きにするととてもおいしいですね。さすがに脂ののった鰤などには向きませんが、「あっさり蛋白質」とバターの相性はとにかく抜群です。お肉では、焼くとぱさつきがちな鶏むね肉や豚もも肉などが向き、バターをまとわせるとこくのある一品に。

また、バターは意外とアジアの調味料との相性もいいです。バターで焼いたり炒めたりしたお肉の味付けを、塩のほかにしょうゆやナンプラー、オイスターソースなどで試してみてください。オリーブオイルやサラダオイルを使っていたいつもの料理をバター味にしてみると、それだけで味わいが広がります。料理レパートリーを増やさなくても、このバリエーションを覚えるだけで食卓が賑わいますよ。

バターはパンに塗るだけ、という方もこの冬からは、あっさり、さっぱりした食材にボリュームをもたせる調味料として使ってみるといいのではないでしょうか。

そんな今の季節にぴったりな一冊が、先月発売されました。『バターは調味料。ほんの少し使うだけでおいしくなる』(グラフィック社)。バター好きさんにとっても目新しい使い方をちりばめてありますので、よかったらお手にとってみてください。

レシピなしで作る、温かい汁物

先週末の台風19号は大きく深い爪痕を残して去って行きました。
被災された方々へお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧がかないますようお祈りいたします。

このところ急に冷え込んできたので、風邪をひく人が増えていると聞きます。災害でストレスを受け、ただでさえ疲れているところに、寒さで体が冷えると体調を崩しやすくなります。これからの季節はぜひ、具だくさんの汁物で温まってほしいな、と思います。

本を見てレシピ通りに作ってももちろんいいのですが、おいしい汁物の「基本」を押さえておけば、レシピを見なくてもアレンジ自在、季節や体調、好みに合った汁物が作れるようになります。

レシピなしということになると、だしは何で取ろう? 具材は? 味付けは? と迷ってしまいがち。そんなときは、この基本を思い出してください。

・汁物は、具材が多ければおのずと味が深くなるので、だしに関してはあまり心配しなくても大丈夫。
・少量の油と水で野菜を蒸し煮にしてから水を加えて煮る手順にすると、野菜の甘みを引き出せる。
・油はサラダ油、オリーブオイル、バター、ごま油などから好みで。油脂が入ることで水分の上に油膜の蓋ができ、汁物が冷めにくくなるメリットも。
・野菜を選ぶときは、必ずねぎか玉ねぎを使う。栄養価が高く、甘みが加わってスープがおいしくなる。
・洋風ならにんじんやセロリ、和風なら大根やごぼうなど根菜をベースに、他の野菜やきのこ類を加える。
・肉や魚介、豆腐や油揚げ、麩など蛋白質が入ればさらに栄養価アップ。蛋白質を入れたら弱火でコトコト煮込む。仕上げに卵を落としても。
・味付けは塩・こしょうでもいいし、しょうゆベース、味噌ベースでも。シンプルな味付けで十分おいしいのが具だくさんの汁物のいいところ。
・冷めにくくするためのとろみをつける方法は3種類。それぞれ食感が違うので、具材や好みに合わせて選ぶ。
①水溶き片栗粉(片栗粉と水を1:2で混ぜたもの)を仕上げに手早く混ぜ入れる。 
②好みの油脂と小麦粉を1:1で混ぜたもの(フランス料理の「ブールマニエ」=バターと小麦粉を混ぜたものの応用)と半カップ程度の煮汁を混ぜ合わせ、なめらかになったら鍋に戻して混ぜて加熱する。
③じゃがいもや長芋のすりおろしを仕上げに加えて軽く煮る(素材が持つでんぷん質でとろみがつく)。 

いかがでしょうか。今日、冷蔵庫にある材料でもきっと作れますよ。心も体も温まる汁物やスープ、あつあつをたっぷり召し上がって、この冬も元気に過ごせますように。

こちらの記事も参考に! シンプル粕汁で風邪予防

フランスの家庭でポピュラーな「蒸し料理」とは?

1冊目の『フランス人は、3つの調理法で野菜を食べる。』が発売されたのが2016年9月。それから毎年9月に1冊ずつ刊行され、おかげさまでご好評をいただいている「フランス人の3種」シリーズ。このたび4冊目の『フランス人に教わる3種の “新” 蒸し料理。』が完成しました。今回フィーチャーしたのは、フランス流の「蒸す」という調理法です。

従来のイメージでは「蒸す」調理法は中国や日本などアジアが主流と思われていますが、実はヨーロッパでもよく使われています。素材に蒸気で火を通すのが共通項ですが、アジアのように大きな蒸し器を使うわけではありません。フライパンの底に水を張り、濡れないようにお皿やオーブンシートを敷いた上に食材を置いて、きっちり蓋をして加熱。ふっくらジューシーに仕上がる合理的な調理法です。ヨーロッパで目の当たりにしたそんなテクニックを、いつか書籍にしてご紹介できたらと思っていました。

詳しくは本をご覧いただきたいのですが、フランスの家庭でポピュラーな「蒸し」の方法は、大きく分けて3種類あります。日本の蒸しに近い「ヴァプール」、油分と水分で蒸す「エチュベ」、スープベースで蒸す「ブレゼ」。特に調味液で蒸す方法は、素材の味がしみ出してさらにおいしくなった液を、素材が吸い込んで旨味を増すうえ、栄養分も流出しないという素晴らしさです。

ヨーロッパで蒸し料理が発展したのは、現地の水が硬質で、野菜などをゆでてもあまりおいしく仕上がらないから。でも、かといって電子レンジで加熱するのは嫌う食いしん坊の現地の人々。野菜はていねいに蒸すことでおいしくなるので、そこからエチュベのような調理法が生まれてきたのだと思います。

3つの調理法ごとに章を分けて解説し、素材に合わせて塩味ベース、酢を効かせた味、トマト味などバリエーションも楽しめるようにしました。最適な食材や、ぴったりのソースのご提案もしています。

蒸し料理のメリットはもうひとつあります。蓋をぴっちり閉めて加熱するので、油や水がはねることがなく、火口まわりが汚れません。片付けが楽だと、トライしてみようという気が起こってきませんか?

一冊手元に置いておけば、小さなおかずからメイン料理まで、ヘルシーでおいしい蒸し料理が完全マスターできます。これまでの4冊の中でも特に作りやすく、献立に加えやすい料理が揃ったと思います。蒸気でキッチンが暑くなるので夏の間は敬遠しがちでも、少し涼しくなってきた今からなら、ぴったりの蒸し料理。新しい季節の食卓を賑わせる新しい一皿を、ぜひ作ってみてください。

フルーツを料理に使おう!

デザートやお菓子以外の料理に果物を使うことに、少しばかり抵抗があるでしょうか? 酢豚に入れたパイナップルやポテトサラダに入れたりんごが今ひとつピンとこなかったという人は、ある年代以上、特に男性に多いような気もします。でも今、料理にフルーツを使うことは、かなりポピュラーになってきています。

料理にフルーツを使ういちばんの魅力は、ほのかな甘み、ジューシーさなど野菜にはない特徴が加わることで、見た目が華やかになるうえ、味の奥行きも豊かになること。和食では味に深みを出すために砂糖を加えることがありますが、ヨーロッパの料理でこの役割を果たすのはもっぱらフルーツ。フレッシュのままでもドライにしたものでも、果物の自然な甘みを生かした料理は、実はとてもたくさんあります。

みなさんにおすすめなのは、ちょうど今から秋にかけて続々と出てくるフルーツです。桃、ぶどう、いちじく、プルーン、柿、そして洋梨。これらのフルーツは、香りも甘みもいわば少し派手めないちごやオレンジなどと違い、ほのかな甘みで優しい味わいなので、他の素材とも合わせやすいのです。

気軽に試すなら、まずはサラダで。すっかりおなじみになった桃とモッツァレラのサラダは、いちじくや洋梨に変えてもおいしく召し上がれます。生ハムやチーズの塩気ともぴったりなので、たとえば、柿と生ハムのサラダ仕立てなどもいいですね。左の写真は、柿と洋梨を塩とビネガーとオリーブオイルでマリネしたシンプルな前菜です。

同じくいちじくや洋梨は、バターでソテーして肉料理の付け合わせにしても素敵。右の写真はもう少し手間をかけ、ポークフィレ肉を洋梨のクリームソースで仕上げた一皿です。ぶどうやプルーンはフレッシュでもドライでも、肉料理のソースをおいしくします。
和食にぴったりなのは、柿やいちじく。食べやすく切って白和えや胡麻和えにすれば、ちょっとおしゃれな箸休めになります。

そんなふうに、フルーツをもっと料理に使ってみたら、きっと季節感を堪能できる新しいお気に入りメニューになりますよ。

夏の和食にひと振り! ナンプラーの威力

例年よりは涼しい日が続いていますが、これからやってくる猛暑に備えて、夏をのりきるおすすめ食材の話をもうひとつ。

ナンプラー(ニョクマム、魚醤)を買ったけれど、生春巻きのたれくらいしか使い道がなくて、冷蔵庫に余らせている人は多いのではないでしょうか。実は私もそうで、アジアのごはんは好きですが、かの国々を旅する機会が多かったり現地の食事を詳しく知っていたりするわけではないので、あまりたくさんの使い道を思いつけませんでした。でもある暑い日に、もしやと思ってしょうゆの代わりに使ってみたら、あの独特の香りが蒸し暑い気候とシンプルな和食にけっこうフィットすることがわかったのです。

瓶に鼻先を近づけるとかなり特徴的な香りがするナンプラー。何にでも使うのはちょっと……と敬遠しがちですが、思い切って使ってみると、こんなにいろんなものに合うとは! と驚きです。ナンプラーを入れてみてもしピンとこなかったら、酢や砂糖で酸味や甘みを足しましょう。それでもバランスが悪かったら、唐辛子をプラス。そう、みなさんご存じの、生春巻きのたれの組み合わせです。たとえば、きゅうりとわかめとちりめんじゃこの和え物を、三杯酢や二杯酢の代わりに、このたれで和えてみてください。このナンプラーだれをアレンジしたつゆと、たっぷりの薬味で食べる素麺も絶品です。鶏や魚の唐揚げにレモンやポン酢のようにかけるのもおすすめ。これを葉野菜で巻けば、ちょっとしたアジア風のごちそうになります。

ナンプラーは加熱してもコクが出ておいしいので、炒め物や汁物の味付けにも使ってみましょう。難しく考える必要はなく、いつもしょうゆや塩を入れるところを、ナンプラーに変えるだけ。ここでも、酢と砂糖と唐辛子を脇に控えさせ、バランスをみながら加えていくのがコツ。単体よりむしろ、他の味を加えることで本領を発揮できる調味料といえるかもしれません。ナンプラー味の甘酢炒めなんて、食欲をそそりますね。アンチョビと同種の魚のうまみがあるので、野菜をたっぷり食べられるし、オリーブオイルやバターと合わせても意外なほどしっくりきます。

昨今の日本の夏の暑さは、ほぼアジアの熱帯エリア級。ナンプラーの秘めたる可能性を気軽に試しながら、いろいろな料理に活用すれば、日々の食卓がもっと楽しくなると思います。そうなれば、1瓶なんて1シーズンであっという間に使い切ってしまうかもしれませんね。

香りと香りをぶつけ合う。夏のハーブの使い方

6月の前半、1週間ほどフランスに滞在してきました。フランスでも夏になると、国内の地方でいえば南仏、海外なら北アフリカや中東、東南アジアなど、暑い土地の料理を楽しむことが多くなります。

これらの料理に共通するのは、ハーブがふんだんに使われていること。ほとんどのハーブの旬は夏で、どんどん収穫できるためか、この季節になると市場やスーパーマーケットには、まるで花束のようにまとめられたさまざまな種類のハーブが並びます。こんなにたくさんどうするんだ?という量ですが、そんなハーブのブーケを全部使い切れないかというとそんなことはなく、葉っぱはちぎって、茎はざくざくと刻んで、かなり多めの量を料理に入れて楽しむのです。そんな彼らのやり方を見ると、これが本来のハーブの使い方なんだなと気づかされます。そしてこのやり方を見習って料理を作ってみると、日本の蒸し暑い夏にも合う、新しいおいしさが発見できます。
たとえば、たっぷりのバジルやパクチーを丸ごと茎まで(ときには根っこまで)刻んで、炒め物に混ぜてみてください。ハーブの香りがダイナミックに口の中で弾け、体も気持ちもとても元気になります。タイ料理のガパオ炒めをバジルで作るなら、葉先を少量つまんでのせるのではなく、ぜひ2人分で1パックくらい使い、茎も捨てずに全部入れましょう。さらに、ここに同じ量のパクチーも加えれば最強です。香りの強いハーブは単体でなく、合わせて使うと、どちらも負けずどちらも勝たず、拮抗したまま実におもしろい味わいのハーモニーを奏でます。冷奴やトマトサラダにのせるしそとみょうがが、勝ち負けなしで引き立て合う、あの感じです。
ベトナムのフォーや揚げ春巻きは、たっぷりのミントとパクチーと一緒に食べますね。イタリアンパセリ、チャービル、ディル、ミントなど数種類のフレッシュハーブを混ぜ合わせてドレッシングで和えれば、香り高いハーブのサラダのでき上がり。味わいもパワフルで、肉料理の素敵な付け合わせにもなります。
ほかには、セージとイタリアンパセリも意外とよいコンビ。ローズマリーだけはちょっと個性が強いので、単独で使うのがおすすめですが、いろいろなハーブの組み合わせを試して、好きなコンビを見つけるのは楽しいもの。ハーブは仕上げに添える飾りではなく、香り高い緑黄色野菜。たっぷりのハーブの香りをぶつけ合い、清涼感をプラスした料理で、フレッシュなエネルギーを体に取り込み、夏の元気をチャージしてください。

夏の和食に合うワイン

蒸し暑い季節の到来ですね。私はもともとワインが好きで年中よく飲むのですが、夏のお気に入りはなんといってもソーヴィニョン・ブランです。このぶどう品種のもつ、ほどよい酸味とミネラル感、さわやかですっきりした果実香は、日本の蒸し暑い気候にとてもフィットします。私自身、夏の食事のお伴はソーヴィニョン・ブラン1色と言っても過言ではないほど。このぶどう品種の魅力はほかにもあって、いわゆる「グラン・ヴァン(銘醸ワイン)」に使われる品種ではないので、フランス、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど世界の各産地のワインが、どれも比較的買いやすい価格帯で手に入ります。

代表的なのはフランスのロワール地方。サンセールやプイィ・フュメなどが最も有名ですが、その周辺にもおいしい白ワインを作る村がたくさんあり、私はこの地域が世界のソーヴィニョン・ブラン種ワインのトップだと思っています。有名なボルドーワインの白もソーヴィニョン・ブランがベースで、これもとても魅力的。また、最近とてもおいしくなっているオーストラリアやニュージーランド産のソーヴィニョン・ブランは、フランス産とはまたちょっと違ったトロピカルで華やかさのある香りと味わいが特徴です。価格も親しみやすく、1000円台でかなりおいしいものが買えるようになっています。

そして、これらの白は日本の食事、特に、夏に食べる和食にとても合わせやすいのです。試しに、薬味をたっぷり添えた豚しゃぶやゆで豚、冷奴、それから鶏天、焼き魚、鯵のマリネ、あっさりめの南蛮漬けなどに合わせてみてください。みょうがや大葉などの薬味やポン酢などの柑橘系の酸と、ソーヴィニョン・ブランのもつ酸味が、意外なほどぴったりくることに驚かれると思います。今度ワインを買いに行くとき、ぜひソーヴィニョン・ブランを探して、そして和食に合わせてみてください。とても楽しいですよ!